【究極の言いたい放題】レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの魅力について
「レッド・ツェッペリンとパブリック・エネミーの融合」と呼ばれる特徴的なサウンドと、チェ・ゲバラ、マルコムXなどから思想的影響を受けた政治的主張を持つリリックが特徴の、アメリカ発の4人組バンド、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン。
1990年にカリフォルニア州ロサンゼルスにて結成されて以来、一度の解散と活動休止を経て、今もなおアメリカの巨大な音楽シーンを生きる、LAのオルタティブロックバンドです。
今回はアメリカの音楽シーンの中でもひときわ異彩を放つレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの魅力をバンドのスタイルや活動の軌跡、そしておすすめの4曲を厳選して紹介いたします。
それでは参りましょう!Know Your Enemy!
目次
「レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン」とは
レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン(以後「レイジ」)は、過激で政治的な歌詞をラップ調の歌い回しで感情的に表現する「ザック・デ・ラ・ロチャ(vo)」様々な変態ギターテクニックを駆使して、楽曲に大きなスケールをもたらす「トム・モレロ(G)」そしてどっしりとした重いグルーブでリズム隊を支える「ティム・コマーフォード(B)」「ブラッド・ウィルク(Dr)」の4名で編成されています。
「レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン」のメンバーについて
ここで注目したいのがメンバーの生い立ちです。
「ザック・デ・ラ・ロチャ(vo)」はメキシコ人としてアメリカで初めて画家として認められ、警察の暴力批判や、農場労働組合運動を絵画を通して主張してきた父親と、公民権運動や検閲反対運動に関わった反戦活動家であった母の間に生まれています。
「トム・モレロ(G)」はケニアの民族過激派マウワウ団の一員である父と、検閲反対運動の活動家である母を持ち、本人もハーバード大学を主席で卒業後、クランストン上院議員の秘書も経験しているという異色中の異色の経歴を持っています。
そんな政治に関わることが当たり前の環境で育った二人が、音楽を通して理不尽な警察暴力や一部の人間しか得をしない経済機構や社会組織全てを「意志を持たない構造/システム」と称して「現代社会に対しての怒り」をぶつけることは、起こるして起こったケミストリーだったのです。
海外アーティストの楽曲は英語をあまりよく知らない人でもサウンドやメロディーでリスナーを惹きつけられるほど高いクオリティがあります。
レイジもそのバンドの1つですが、歌詞の内容をしっかり理解して聴き込むと、人格が変わってしまう可能性があるほど衝撃を受けてしまいます。
「レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン」の代表曲は?
第4位 KILLING IN THE NAME
Rage Against The Machine – Killing In the Name (Official HD Video)
1stアルバム「Rage Against The Machine」に収録されている曲で、同アルバムのリードシングルとして、1992年11月にリリースされました。この曲の歌詞は1992年に起こった「ロサンゼルス暴動」から影響を受けたものと言われています。
(詳細はwikipediaにて https://ja.wikipedia.org/wiki/ロサンゼルス暴動)
事件の背景にある「人種差別」から起こった白人警察による黒人男性への理不尽な暴力。
それを痛烈に批判した歌詞を、どこまでも重たく過激なアンダーグラウンドサウンドで、より伝わりやすい楽曲として仕上げており、聴いていると眠っていた怒りの感情が呼び起こされて、思わず体を揺らしてしまいます。
イントロはディストーションギターの開放弦に気持ちよさを感じたのも束の間、その後いきなりベース単体の怪しげな3連符調のフレーズに、ドラムのカウベル(ここでカウベル!)が絡んだかと思いきや、スネアドラムの一打を合図にしてダンサンブルビートがスタート。
そこから転調を挟んで、ザックの「Killing the name of 〜」で、もう後はアドレナリンに身を任せて楽曲と共に感情を昂らせるだけ。
ここでのポイントはやはり歌詞の内容。
「人殺しさえ正当化されてしまう社会の言いなりになっていいのか?」という「人種差別」への問いかけと「ふざけるな!そんな奴らの言いなりにはならねぇ」という強い意志を表現しています。
これを理解するとバンドサウンドと歌詞の、点と点が線になって繋がり、何回も繰り返して聴いて味わいたくなる衝動にかられます。
ちなみにこの楽曲が収録されているアルバムのジャケットは、ヴェトナム戦争に反対して焼身自殺をした僧侶の写真となっており、リリース時の衝撃は凄まじかったようです。
第3位 Know Your Enemy
Rage Against the Machine – Know Your Enemy – 7/24/1999 – Woodstock 99 East Stage (Official)
「お前の敵を知れ」というストレートなタイトルのナンバー。
レイジが一貫して掲げているメッセージは富裕層や特権階級が支配する地球上のシステム。
つまり「マシーン」に対して不当さを訴え続けて「平和・平等・共存」のための闘争(抗議)を呼びかけるというものです。
Know Your Enemyは一体自分の本当の敵は何なのか?それに気づき暴きそして戦え。
己の自由のために。という力強い想いが込められています。
歌詞の冒頭の「Yeah.we’re comin’ back in with another bomb track」(また来たぜ、新しいボムトラック(爆発級の曲)と共に」とザックが言う通り、Know Your Enemyはレイジを代表する楽曲だと思います。
と言うのも、私がレイジと出会ったのもこの楽曲をバンドでコピーしようと言う話を、友人のバンド仲間から提案されたのがきっかけでした。
当時はバリバリのパンクサウンドをプレイしていた私にとって、レイジのサウンドからバンドサウンドの新たな可能性を感じたのを昨日のことのように思い出します。
その楽曲の流れとしてはイントロでトム・モレロのトレモロアームとレガート奏法を駆使した、近未来的なギターサウンドから始まり、あとノリのヒップホップ8ビートが加わるという斬新な組み合わせが衝撃的で、ザックのかっこよくしゃがれた特徴的な声が加わると、そこには誰も真似ができない唯一無二の音楽隊が出来上がります。
ライブでは楽曲の最後にザックが「All of which are American dreams」とひたすら繰り返すと同時に観客も同じようにリリックを叫ぶ一体感を感じることができ、このバンドの持つ計り知れないエネルギーを思い知らされます。
第2位 Bulls On Parade
Rage Against The Machine – Bulls On Parade (Official HD Video)
重々しい怒りを内包した個々のエネルギーが集まり行進をする。そんな情景をイメージしてしまう重低音の効いたサウンドから始まる楽曲。
Bulls(ブルズ)という言葉には権力や武力・富など大きな力が表現されており、そんな権力者たちが自由に闊歩する社会にノーを叩きつけるという内容となっています。
この楽曲は1996年4月16日に発売された2ndアルバム「Evil Empire」に収録されています。
ちなみにこのタイトルは元アメリカ大統領、ロナルド・レーガンがソビエト連邦への記述の際に発言した「Evil Empire(悪の帝国)発言)」から取られています。
「弱者はふみにじまれるだけの構造」なんてクソくらえだ!本気でそう思っているからこそ、これほどのエネルギーを生み出すことができる。
音楽が作り出す感情の爆発力をレイジは極限まで高めることに長けています。
歌詞の内容は「権力者」「富裕層」などの社会的強者に対しての反抗を今しなければ何も変わらない。
だから立ち上がって争い続けるんだ! Bulls On Paradeに!というものです。
その中でも曲中何度か繰り返される「Rally ‘round the family with a pocket full of shell」はマザーグースの「Ring-a-Ring o’Roses」の韻を踏んでいるのがユニークで、小馬鹿にしている余裕が逆にレイジの侮れなさをより強調しています。
楽曲は重々しいサウンドからトムのワウペダルを駆使した、ジャンルに囚われない独特な音色のカッティングフレーズから、ザックの「Come with it now!」の掛け声でボルテージが一気に上がる一体感を作り出し「言いたい放題」が始まります。
そんなザックのボイスも最高な楽曲ですが、この曲の目玉は間違いなくトムのギターソロです。
そこには超絶テクニカルなギターフレーズや、涙を誘うメロディアスな旋律を奏でるという王道パターンは存在しません。
彼は宇宙と交信するかのようにトレモロアームとスクラッチ奏法を使って、ギターから電波音を発するという発明的演奏を行っています。
トムの変態的と言われる所以がここにあり、それを十分に堪能することができます。
第1位 Guerrilla Radio
Rage Against The Machine – Guerrilla Radio (Official HD Video)
1999年11月16日にリリースされた3rdアルバム「The Battle Of Los Angeles」に収録されたハイテンションチューン。
同アルバムの1stシングルとして1999年10月にリリースされました。
日本では「総合格闘技PRIDE」のメインテーマや「オールナイトニッポン」のBGM及びフィラーとして使われていて耳にしたことがある方も多いかもしれません。
この楽曲はPVの不気味さに圧倒されます。
どこか発展途上国を匂わせる古いミシンを使った洋服の製作風景を、軽快なジャズの調べに乗りながら流し始めたかと思いきや、突然始まる闘争心を煽るような激しいサウンド。
しかしそれと同時に映るメンバーはどこかやる気のない雰囲気。
そこから始まるザックの言いたい放題とPVの登場人物たちであるカップル。
そして、この二人の展開がやばい。冒頭からとても情熱的な二人。
そこから彼女は彼の腕に自分の腕を絡めて歩いています。
そこから両手にはたくさんの洋服袋を持った彼女が、自宅にてドレスアップした自分を満足気に眺めつつ、それを何度も噛み締めるかのようにお色直しが幾度となく続きます。
そんな彼女に彼は、初めから「やれやれ」感を出しつつも、時折笑みを浮かべながら優しく見守っていると、最終的にはテニススタイルでと、びっきりの笑顔を見せた彼女の顔から、お会計を済ませる彼の手に画面が切り替わると、その手が生身からマネキンに変化・・・
そこからはザックの「Lights out guerrilla radio!」の声に乗りながらテンション全開のサビが流れます。
小話を挟みますが、レイジはこのアルバムの次のカバーアルバムをリリースした後に、解散をしてしまいます。
その理由として「ザックの脱退」が挙げられています。
確かにレイジの個性である、社会への抗いをラウドなサウンドに乗せて表現するスタイルには、ザックのヴォイスは欠かせない。
むしろなくては成立しないほど、聴く人へ与えるインパクトは大きいと感じています。
この「Guerrilla Radio」のPVを見ていると焦点がいつもザックに向いてしまうので改めて思いました。私は彼にゲリラされています。取り乱しました・・・
そしてサビが終わり、繰り返し始まるAメロから、カップルの不気味さが増していきます。
二人はいつの間にかマネキンになっていながら、テニスウェアを着てテニスをプレイしているのです。。。
ボールが当たって落ちた彼女の腕を、彼が元に戻すが、今度は彼女が彼の顔にラケットを当ててしまうと、彼の頭が首から転げ落ちてしまい、その流れで彼女が倒れ込んで爆発する。
というトラウマ級の展開・・・
その後どうなるのかは、ぜひ皆さんの目でご確認ください。
そんなカップルとザックに注目が集まってしまう中でも健在なのが「変態・トム・モレロ」もはや使っているのはギターではないんじゃないか?と疑ってしまうほどトリッキーなギターソロを披露してくれます。
今回はピックアップセレクターとワウペダルをふんだんに使った奏法で、ラッパの様な、ハーモニカの様な音色で楽曲に個性を加えています。
そして終盤には「All hell can’t stop us now」(何者だろうが俺たちを止められない!)を連呼し楽曲の幕が閉じられます。
PVの不気味さに気を取られつつも、この曲の完成度の高さに圧倒されつつ、4人の個性が交わらなければ作り上げることの出来ない世界を何度も堪能したくなります。
最後に
そんな大きな個性が組み合わさって、聴くもの全てを反逆者に仕立て上げたレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン。
2000年にファンに惜しまれつつも解散しましたが、その後の2007年に再結成を果たしました。
2011年のライブ以降は活動が休止の状態でしたが、2020年の3月に活動再開!これをきっかけに、言いたい放題を解禁し始めた彼らのこれからの動向には目が離せません!
それでは!
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