ブリティッシュハードロック界の重鎮【Deep Purple】のおすすめ楽曲5選

【Deep Purple】とは、1968年にジョン・ロード(key)リッチー・ブラックモア(g)イアン・ペイス(dr)ニック・シンバー(b)ロッド・エヴァンス(Vo)の5人で結成され、2度の解散と3度の再結成。10度のメンバーチェンジを経つつ、今もなお世界のロックシーンの重鎮として生き続けているモンスターバンドです。

今回はそんな数え年55歳でも衰えを知らない【Deep Purple】の「黄金期」と言われた「第2期」で発表された数々の名曲の中で、特におすすめの楽曲5選を、ドラマーである筆者が「ドラムプレイの聴きどころ」を添えつつご紹介させていただきます。

※第2期のメンバーは結成当初のメンバーから、ベースがロジャー・グローバー。ヴォーカルがイアン・ギランにチェンジしています。活動時期:1969年〜1973年

それでは Black Night!

第5位 Fire ball

1971年7月にリリースされた第2期でのセカンドアルバム「Fire ball」の第一曲目を飾るタイトルナンバー。イアン・ペイス(後述はイアン)の疾走感のありつつ、ジャジーなハネ感を出したツーバスが今聴いても唯一無二であるイントロがサイコーです。

ちなみにこのアルバムはUKチャートで最高1位を獲得しているアルバムです。

この楽曲の聴きどころはやはり「ドラム」です。前述のツーバスを全編展開しながらも、シンバルやスネアワークも単調にならない。しかもチューニングが圧迫感の感じない状態になっていてうるさすぎない(当時のレコーディング環境もあると思いますが。)。それがイアンのキレのあるドラムプレイをより際立たせているように感じます。

イアンのルーツの1つは、アメリカのビッグバンド・ジャズの新境地、及びビバップの誕生に協力した「バディ・リッチ」であると言われており、【Deep Purple】の楽曲の随所に、その影響を自分のスタイルに昇華した、名演と呼ばれるフレーズが沢山あります。

その中でも「Fire ball」では、イアンの代名詞でもある高速連打を「これでもか!」というほど披露しています。下記のドラム譜は、1回目のサビが終わった後の、2回目のサビに入る前のシングルストロークの高速連打になります。

※様々な意見があると思いますが、私の耳が聴いたフレーズです

楽曲中ではベースのスライド音と合わさって、「一度一番下まで下がった遊園地のアトラクションが、また一番高いところに猛スピードで戻っていく」ような感覚がして、この楽曲のスリリングさをより引き立たせる効果的なフレーズになっています。

第4位 Strange Kind of Woman

1970年6月20日にリリースされた第2期でのファーストアルバム「Deep purple in Rock」に収録。

夜の街の女に惚れた、男の淡い想いを表現したような楽曲。第5位と同じく「Fire ball」に収録。「昔ある女がいた ちょっと変わった」という冒頭の歌詞が、男の本質である「わかっちゃいるけどやめられない」マインドを尊重しているような優しさを個人的には感じてしまいます。あくまで個人的にです。。。

曲調は3連のミドルテンポのビートが主体で、バンドの持ち味であるスピード感はなりを潜めているように感じますが、何かやらかしてくれそう(いい意味で)な空気はこの楽曲からも感じることが出来ます。

そんな楽曲の聴きどころは1回目のサビが終わった後のドラムフィルです。

やはりやらかしてくれます。「色眼鏡の暴れん坊」(勝手につけました)ことイアンは、ここでも持ち味のスピード感を活かしたフィルを、まるで辛さの足りないカレーに、絶妙なスパイスを振りかけるように要所要所で決めてくれます。

もちろんそんなドラムプレイだけではなく、イアン・ギラン(後述はギラン)の狂気から哀愁まで全てを表現できる声もしっかり堪能出来たり、リッチー・ブラックモア(後述はリッチー)の多彩なギターソロを聴けたりと聴きどころは満載です。

第3位 Space Truckin’

1972年3月にリリースされた第2期でのサードアルバム「Machine Head」に収録。

宇宙を旅するイカれたロック集団と飛び立とうぜ!そんな気持ちが込められた歌詞をダンサブルな曲調で壮大に広げている楽曲。しかしながらどんな曲調であってもバンドの色である、スリリングさが消えることがありません。【Deep Purple】の可能性に上限は無い。そんな宇宙級モンスターバンドを象徴するナンバー。

イントロの音の出ない空間の中でさえも感じるグルーヴ。楽器隊が合わさった時の音圧のインパクト。声さえも楽器として捉えることが出来るほどの表現力。頑張って言葉で現そうとしていますが、百読は一聴にしかずですね。まずは聴いていただきたいです。

そんな中、のっけから聴きどころのフレーズがこちら。

ベースとオルガンとドラムが、間を活かしたユニゾンを披露するイントロの締めとして注入される「イアンスパイス」。タムを4連打するだけという、シンプルなフレーズの中に表現者として自信を感じてしまいます。カッコよすぎ・・・ちなみにこのフレーズはライブではスネアやバスドラムを絡めたフレーズに変わったりしているので、どれが一番「クル」のか聴き比べて見るのもいいかもしれません。

そして、ここではドラム以外のパートでの聴きどころをご紹介させていただきたいです。七色の声を持つ男「イアン・ギラン」です。ブルースを基調として、時に金切り声を立てるという独特のヴォーカルスタイルは後にヘヴィメタル・ヴォーカリストにも大きな影響を与えたと言われている通り、本曲でも縦横無尽の金切り声を出しまくっています。

そんな彼の声を満喫できるのが3回目のAメロです。低音の金切り声と、高音の金切り声をご堪能あれ。

第2位 Child in Time

第4位と同じく「Deep purple in Rock」に収録。

「争い」に立ち向かうには暴力ではなく声を上げること。そんな、人が人として生きていくために必要なことを改めて気づかせてくれるような、ギランの叫び声がどこまでも胸に深く突き刺さる珠玉のナンバー。

10分を超える大曲ですが、シックなイントロでありながら、それは「嵐の前の静けさ」であるとでも言っているかのような一定の緊張感が終始はりめぐらされており、いつの間にかパープルワールドに惹き込まれてしまいます。

一旦聴き始めると「いつの間にか聴き終わっていた」というような体験ができるかもしれません。個人的には一人で酒を飲みながら大音量で聴いて叫びたい。そして大号泣したい(引かないでください)です。自分の世界にとことん入りたい方に特におすすめです。

聴きどころは間違いなくギランです。この楽曲はギランなしでは成立しない。そんな確信を持てるくらい彼の全てが詰まっています。

冒頭の哀愁を含んだ歌い回し。そこから始まる物憂げなハミング。そして曲調に合わせてどんどん例の金切り声が激しくなっていく。。。これが【Deep Purple】の声。バンドの黄金期である第2期を支えた、まさしくゴールドヴォイス。芸術です。

・・・ドラミングの聴きどころは2回目のサビが終わった後の間奏前のキメの8小節です。「この紋所が目に入らぬか?!」という、ご隠居の家来の名台詞が聞こえてきそうなリズムの中に、ペイスの隠し味が盛り込まれています。

※「ラフ」と呼ばれる装飾音符(赤丸)を加えることで、単純な3連符の繰り返しから、とてもテクニカルなフレーズに聞こえてくるパターン。一味違うドラミングパターンを取り入れたいと考えている方は参考になるはずです。

番外編 イアンのスピーディーなドラミングは椅子の高さによるもの?!

イアンペイスの数々の名演を表現するには「スピード」という言葉が欠かせないと思います。そんな彼の持ち味を十分活かし切るために一役買ったのが「ドラムスローン(椅子)の高さ」によるものであると筆者は考えております。

根拠は、実際にスローンの高さを高くしたり、低くしたりしてドラムをプレイしてみれば体感することが出来ると思いますが、椅子を高くしてドラムをプレイすると「足が邪魔にならない」んです。その分ドラムセットに近づけるのでタム回しがしやすくなるのと、スネアをヒットした時に腕と足(太もも)が接触するストレスがないのが大きなメリットです。

【Deep purple】より一足先にイギリスのハードロックシーンで大活躍していた【Led Zepplin】のドラマー「ジョン・ボーナム」は、「スピード」というよりは「グルーブ」に重きをおいたプレイを披露していますが、彼のドラムスローンの高さは、座った時に「太ももが地面と垂直」になるのに対して、イアンは「太ももが地面に対して45度」ほどになります。

それを踏まえた上での聴き比べも楽しいですよ!

第1位 Speed King

第2位・4位と同じく「Deep purple in Rock」に収録。

教会で聴くような壮大なパイプオルガン風な旋律から打って変わり、ハイスピードな楽器隊のリズムで、直訳すると訳のわからない歌詞をあいも変わらず痺れるヴォイスに乗せて歌う。「スピード」という単語の意味が「速さ」であったり「若さ」であったり「危うさ」であったりと、様々な解釈が出来るアンストッパブルナンバー。

いつも感じるのは、「オルガン」をここまでハードな音楽に違和感なく見事に取り入れることが出来ているという、ジョンのセンスです。この楽曲の主役は間違いなく彼です。

彼の見せ場は「間奏」です。サビが終わりその余韻を残したまま徐々に演奏はハードロックからジャズモードへ。この流れを自然に演出する「オルガン」のしれっとした旋律。本当にしれっと、そしてしっかりと聴かせてくれます。

そしてそんなオルガン演奏をより引き立たせてくれているのが、リッチーのギターとの掛け合い。まるで会話をしているかの様なやりとりがお互いを刺激しあって楽曲をより盛り上げています。

しかもそこにも【Deep Purple】らしさを失わないイアンの隠し味が!

「いつでも準備出来てるぜ」と言っているかのような、スピード感を忘れていないバスドラ8分音符のウラ打ちパターン。左手でリムショット(リムのみ)やタム打ちなどをランダムに駆使しながら、トップスピードを「今か今か」と待ち侘びているようです。

それに加えてベースのロジャー・グローバー(やっと出た!)のフレーズが煽る煽る!彼らの武器はスピード感だけでなく「スピーディーなグルーヴ感」だったのです。

そして徐々に激しさが増して、ギターの音色が歪み始め、タイトなスネアが再び鳴り始め、スピードキングが帰ってきます。

こんなにスリリングでバランスよく楽器隊が暴れていて、メロディアスでスピーディな間奏を披露できるバンドは【Deep Purple】以外にはいません。

まとめ

いかがでしたでしょうか?発表されて50年以上経っていても色褪せない楽曲。彼らの黄金期のエネルギーがどれほど凄まじいものであるのかを、ぜひ耳にして体感していただきたいです。

ちなみに、UCCブランドの 「BLACK無糖」でお馴染みの楽曲「Black Night」は「BLACK無糖(ないとう)」とかけたとか、かけなかったとか・・・信じるか信じないかはあなた次第!

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